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「あ、ごめんなさい」と謝る松田聖子の誠実 [松田聖子の歴史を動画で振り返る]

 松田聖子は生放送の歌でも、数々の失敗をやらかしている。
 84年11月にリリースされた「ハートのイヤリング」をザ・ベストテンで歌ったとき、彼女はセットに放たれていた子犬を踏んでしまい、驚いて歌が崩れてしまった。彼女は「ごめん」というような仕草をしてすぐに歌は元に戻る。しかしこれは、曲とは何の脈絡もないセットで子犬を放った局側の企画じたいに問題があった。松田聖子にはかわいそうな状況だったが、この時の光景は今でも覚えているらしく、印象深かった事件なのだろう。

ハートのイヤリングで犬を踏んだ.JPG


 「SweetMemories」では、一度英語の歌詞部分を一部飛ばしてしまったということがあった。疲れていたんだろうか。具体的には、
Don't kiss me baby we can never be
So don't add more pain
Please don't hurt me again
I have spent so many nights
Thinking of you longing for your touch
I have once loved you so much
の中で、「So don't add more pain」の部分が空白となった。彼女は笑顔でそのまま歌い続けたが、曲の最後に謝っているような仕草が見られる。

SweetMemoriesで歌詞が飛ぶ.JPG


 そして最も大きな間違いをザ・ベストテンで犯してしまう。ニュージーランドでの撮影を終えて帰国した直後に出演したこの番組で、彼女は「ロックンルージュ」を歌う。2番の歌詞で、
防波堤を歩くときジョーク並べて笑わせたの
黙りこむともりあがるムードの波避けるように
君がス・ス・スキだと急にもつれないで
時は逃げないわもっとスローにささやいて
となるところを、
1番の歌詞「ちょっとブルーに目を伏せた」が一緒になって、「もっとブルーにささやいて…」と歌ってしまったのだ。
 これにはさすがに歌いながら途中で気がついて、何回か目をパチクリとしたあと、
「あ、ごめんなさい」と左手を頭に当てながら、歌の途中で謝るのだ。
 非情にもカメラは聖子の顔をアップで捉えている。彼女は「しまった」という感じで右目をつぶってウインク状態になった。ここで歌としては完全に復活しているのだが、さらに彼女はもう一度右目をウインクして自分の失敗を悔やんでいる。その後も歌いながら何回か目をしばたたかせて動揺をあらわにしていた。しかし、動揺もここまで。
「気持ちは YES
横断舗道白いストライプの上」
になると歌も表情も完全に復帰する。しかし、「待ってて PLEASE」というところで、彼女は両目をつぶって失敗を悔やんでいるような仕草をしている。そして「 I WILL FALL IN LOVE」と歌い終わったあとで、もう一度右目をつぶってカメラに向かい、マイクをオフにしてはっきりと口の動きがわかる形で「ごめんなさい」と謝っている。
 さらに曲自体が終わった後、左手で口を覆って「あーやっちゃった」という感じの動きをする。そして左手を頭にやって、困ったような仕草をする。ここで司会者が笑いながら聖子を呼んで、「ニュージーランドにあれだけ長く行っていたから。大丈夫ですよ」と話しかける。聖子は「…すみませんでした」と天を仰ぐ。その後再び左手で頭をかきながら今度は左目をつぶって謝り続けるのだ。

あ、ごめんなさい.JPG

 曲の途中で「あ、ごめんなさい」と謝る姿に、彼女の誠実さを感じた。とっさのことで、ごく自然とそういう動きとなったのだろう。だが、そういうときに人の真実、人となりは見えてくるものだ。この謝る姿に、一種の感動すら覚えた。そして、なによりこの謝る姿が、実に愛くるしかった。
 しかし、「曲の途中で謝らずにそのまま平然と歌い続けるのがプロ」という意見もあるだろう。謝るのは聴取者に対して失礼だという考え方も存在するだろう。そうなんだけれども、ここで何回も「ごめんなさい」と素直に謝った聖子の人間性に、とても暖かいものを感じたのだ。自分がそういう立場に置かれることはないだろうが、そうなったときにとっさに「ごめんなさい」と謝れるか?この場面は、人間・聖子を浮き彫りにした内容として、極めて貴重なものだと思う。
 この動画は、実は私の松田聖子動画収集の動機付けとなった初期の頃のものだった。ここから松田聖子の真実を追いかけてみようと思い立って、80年代動画の収集が始まった。そのきっかけとなったのが、この「あ、ごめんなさい-ロックンルージュ」だったのだ。
 この「あ、ごめんなさい」動画はもう1つの側面も持ち合わせていた。彼女は口パクで歌ってはいない、という事実だった。この頃の歌番組では、一部の歌手に口パク疑惑があった。実際に、口パクだった歌手もあったようだ。とくにレコードと同じ歌唱状態の松田聖子には、根強い口パク疑惑が存在していた。しかし、図らずもこの「歌詞間違え事件」でこの疑惑は見事に払拭された。彼女は、透き通るような高音で実際に楽曲を歌っていたのだ。
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