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辻褄合わせのプリウス50後期デザイン [その他]

 プリウス50が昨年12月17日にマイナーチェンジした。その目玉はなんと言っても外観デザインの変更にある。評判の良くなかった特異なデザインを一般受けするデザインに変更した。そしてこのデザイン変更はおおむね好意的な評価を受けているようだ。
 しかしよく観るとこの後期デザイン、単に一般受けするように辻褄を合わせたような感じにしか見受けられないのだ。フロントフェイスは下に長く伸びていたウインカーランプを廃止してそれを中央へ移しただけ。それに伴ってアクセサリーランプを無理矢理縦長にした。それで行き場のなくなったフォグランプは丸形の独立型を下側のグリルに埋め込んだ。
 リアに至ってはもう破綻しているとしか言い様がない。縦型のコンビネーションランプを横型にするためにこれを少ないスペースに無理矢理押し込んだ。本来はリアの下側ハッチのガラス部分を薄くしなければデザイン的に適合できないのに、その部分には手を入れずそのままにした。そのため、妙に下側ガラスハッチが厚い。しかも、両サイドには前期モデルの縦型ランプのときそのままのプレスラインが残ったままになっている。

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上は50プリウス後期モデル


 50前期型モデルのデザインは、とくにその前の30モデルユーザーには不評であったという。これは営業マンもぼやいていた。「デザインが気に入ってもらえずに30ユーザーに売れない」
 トヨタの社長も「プリウスはデザインがよくない」と公然と発言していたこともあって、その見直しは必至と見られていたが、それはほぼ30ユーザーに気に入られるような単なる「パズルの組み合わせ」に終始したようだ。これで30ユーザーを含む一般的なユーザーには気に入ってもらえるということなのだろう。この後期デザインは、「30ユーザーに気に入られればよい」だけなのだ。厳しい言い方になるが、ユーザーに迎合するだけで、工業製品に込める「志」が低いのだ。
 そんなこともあって、発売台数も大幅に縮小され、もはやプリウスにはトヨタは期待をしていないことを示している。蛇足だが、前述の営業マンに後期モデルの売れ行きを聞いてみたが、「あまり引き合いがない」と落胆していた。
 さて、それでは前期モデルのデザインはどうだったか。確かに特異で、先進性を追求する余りに個性が強すぎた面があるのは間違いない。私は実物を実際に見ることなく事前予約で購入したため、実際のモデルを見たときには、「これは売れないよ、デザインが悪すぎる」と営業マンに言ったものだ。
 そんな特異で個性的なデザインでとても受け入れられるものではなかったが、しかしデザインとして破綻まではしていなかった。ところが、後期のデザインは、無理矢理の辻褄合わせを行ったために、完璧に破綻しておかしくなった。個人的には滑稽とすら思えてしまう。これでは高齢者と女性ユーザーが大半を占める前モデルの30ユーザー以外には受け入れられにくいだろう。

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上は50プリウス前期モデル


 「歌舞伎顔」、「ピエロ顔」と自動車評論家から悪態をつかれた50前期のデザインだが、「顔認識能力」が低い私は、このような「歌舞伎顔」、「ピエロ顔」に見えたことがない。空間認識能力の高い評論家諸氏やユーザーの多くはこういったフェイスに見えていたのかもしれないが、少なくともクルマのフェイスが顔に見えたことがない私には、こういった顔には見えなかった。50前期モデルが悪いと言ったのは、そのデザイン配置があまりに先進性を意識したために、他との差別化しか考えていなかったことに尽きる。
 プリウスは、レゾンデートルがはっきり言ってもはや風前の灯火になっている。自社内でも他にライバルがなく、上級モデルや下級モデルのユーザーも幅広く取り込んで売れまくった30モデルの時代とは違って、ハイブリッドはほぼすべてのブランドに搭載され、もうプリウスでなければならないというわけではない。30前期では下位のモデルは安いブランドのユーザーを狙ってコストダウンを図るために部材を安物にしてスポット溶接の数まで減らしていたりした。もはやそこまでして下級ブランドのユーザーを取り込む必要もない。十分なハイブリッドラインアップが完成しているのだ。
 そういった背景も先読みし、プリウス開発陣は危機感を高めて、その存在意義を持続するためにプリウス50のデザインをより先鋭的なものにしたのだろう。そのことがプリウスブランドを維持するために必要と考えたのだろう。しかし、時代はそんな特異なデザインは求めなかった。むしろ、よりコンベンショナルなデザインを欲したのだ。それに気づいて舵を大きく伝統的なデザインへ切り替えしたが、すでにプリウスは時代が求める存在ではなくなっていた。同じセグメントCであるカローラで代替えできるものとなった。トヨタのブランド廃止とディーラー統一が進む中で、プリウスはどこまで存在価値があると認められるのか、黄信号が点り始めたと言えるだろう。
 すぐにプリウスが消え去ることはないだろうが、次のフルモデルチェンジで独自のアイデンティティをどこまで発揮できるのか。プリウスは次期モデルの開発でブランド持続の正念場にたたされていると言える。
 ところで、50後期モデルにおいて、プリウスは外観変更以外では大きな技術的革新はまったくない。50モデル前期が登場したときのようなTNGA採用という華々しさもないし、衝突低減ブレーキをはじめとする安全装備についても、進化はしているが前期登場のときのような衝撃はない。T-connectにしても、後期モデルのような高機能の応答はないにしても、前期モデルはすでに多くの部分でインタラクティブ機能を実現している。つまり、中味はほとんど変わっていない。とくに走行性能に関してはほとんど何も変わっていない。
 50プリウスはハードウェアに関しての完成度は高かったのだと言えよう。30とはまるで違う走行性能、乗り心地の良さ、ハンドリング、剛性感の高さは特筆すべきものがあった。この良好な運動性能を、「30ユーザーの多くは理解できないんですよね」と、ディーラーの営業マンは嘆いた。

 プリウス50には、特定走行領域でのバイブレーションなど気になる点もあるが、走りには味わいがあり、楽しめる部分がある。すでにトヨタはプリウスに関しては「諦めてしまった」ようだが、次期モデルでは自動運転機能の世代進化など、トヨタの先進性を示す機能を搭載して欲しいものだ。
 最後になったが、おそらくはこの50モデルにも、30モデルと同じようにマイナーチェンジには前期モデルのデザインを昇華させた案もあったことだろう。それはいったいどんなデザインだったのだろうか。見てみたい気もする。

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