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可憐さの中に圧倒的歌唱力を見せつけた松田聖子の伝説的ワンマン番組 [松田聖子の歴史を動画で振り返る]

 80年代前半の松田聖子のテレビ番組で、「伝説的番組」として語られる作品がある。すでに多くの方がご存じの「ザ・スター 振り向けば……聖子」である。

 「ザ・スター」は、1981年から1983年にかけて、フジテレビが関東ローカル枠で深夜に放送した音楽番組である。1ヶ月に一人の歌手にスポットを当てて持ち歌やカバー曲をワンマンライブのような感覚で歌わせるという趣旨だった。 「ザ・スター」には美空ひばり、北島三郎、五木ひろし、森進一、五輪真弓、森晶子、岩崎宏美ら20人ほどの歌手が出演した。詳細な資料がないので断定はできないが、この「ザ・スター」の出演者中、松田聖子はおそらく最年少である。

 「振り向けば、……聖子」のスタッフロールによると、プロデューサーはフジテレビの一時代を築いた名物プロデューサー高田明侑(はるゆき)氏。当時47歳。業界内では「めいゆう」さんと呼ばれて親しまれた。高田氏は出演者を非常に大事にする人だったと言われている。氏はすでに2011年に故人となった。ちなみに、高田氏は1974年から1980年まで加賀まりこの夫だった。
 ディレクターは現フジパシフィックミュージック代表取締役社長の上原 徹 氏。上原氏は1968年に「小さな日記」というヒット曲を放ったフォー・セインツのリードボーカルを担当し、その後フジテレビに入社、「夜のヒットスタジオ」「スター千一夜」「君こそスターだ!」「ザ・スター」などを制作した。番組制作当時は35歳だった。
 構成作家は、今や何の説明もいらない、あの「秋元康」。番組制作当時は24歳だった。
 制作の中心となる技術スタッフは主にフジテレビ系番組制作会社株式会社ニューテレスが担当した。
  
 2012年、フジテレビの倉庫からこの「ザ・スター」の映像VTRが見つかったという。このVTRを元に美空ひばりの劇場公開用映画が制作され、2013年10月19日から2014年9月13日まで19回にわたり「ザ・スター リバイバル」という番組がBSフジで放送された。しかし、この「ザ・スター リバイバル」では松田聖子の「振り向けば、……聖子」は紹介されていない。

 「振り向けば、……聖子」は1983年3月1日から29日にかけて、5週にわたって放送された。放送期間中に聖子は21歳の誕生日を迎えているので、収録は20歳の時に行われたことになる。番組中では、歌だけでなく、本人だけが出演したコントやトークが曲の間に披露された。後述する圧倒的歌唱力を見せつけた持ち歌やカバー曲とともに、彼女が持つエンターテイメント性を遺憾なく発揮した番組だった。

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 持ち歌の演奏はすべてカラオケ音源が使われた。番組エンディングには、持ち歌の一部とカバー曲がザ・コンソレーションの演奏で歌われた。ザ・コンソレーションは松田聖子のライブ用に編成されたバックバンドで、テレビ番組出演の際に生演奏が必要なときは出演することがあった。コーラスもまたライブの際に組んでいたコールアカシアの松田聖子専任チームと思われる。
 
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 当時の松田聖子のライブステージは、音楽的に極めて完成度の高いものだった。それは、アイドルという枠を完全に超えた域に達していた。伝え聞くところによると、ライブの前2週間くらいから、バックバンドやコーラス、スタッフは合宿してチームワーク性を高め、研鑽を積んだという。ライブの音楽性は、そういった目に見えないバックボーンから生まれていた。

 当時の松田聖子の音楽性は、とてもアイドルなどという範疇では語れないものだったが、「アイドル」という形容詞が彼女の歌唱力の高さに一種のベールを掛けてしまったことは否めないだろう。また、彼女自身も「アイドル」という立場を受け入れて、その流れに身を委ねていたことも確かだ。しかし、松田聖子は決して主体性がなかったわけでない。このころから、自分のステージではその音楽性を主張するようになっていたと思う。

 「振り向けば、……聖子」で歌われた楽曲は、様々にカットされて動画サイトにあふれている。撮影は手が込んでいて、フジテレビが力を入れていたことがわかる。持ち歌はもちろんよいのだが、しかし、なんと言ってもその圧倒的歌唱力に舌を巻くのは、エンディングの部分で歌われるカバー曲である。このカバー曲は、CD化はされていない。つまり、このカバー曲を聴くためには、アップされている動画を見るしか、方法はない。

 そのカバー曲の中でも最も素晴らしいのは、「きみだけのバラード」だろう。この作品は、この番組が放送された前年、1982年の東京音楽祭でグランプリを受賞している。「きみだけのバラード」は、アップデータが何回も削除されても、また誰かが投稿して動画サイトから消えることのない珠玉中の珠玉作だ。その他、「グッバイ・ガール」、「エンドレス・ラブ」のほか、「HERE I AM」の4作品は、彼女自身の歌唱力もさることながら、ザ・コンソレーション、コールアカシアとの共演が心を動かす高度な音楽性を放っている。

きみだけのバラード
I Don't Want To Lose Your Love/John O'Banion(1982)

グッバイガール
Goodbye Girl/David Gates(1978)

エンドレス・ラブ
Endless Love/Diana Ross & Lionel Richie(1981)

Here I am/Air Supply(1981)

 最後に、複雑な権利関係があって、不可能なことはわかっているが、この「振り向けば、……聖子」の完全版をDVD化してほしいと、切望する。私たちの世代だけでなく、その後の世代、またこの放送があった後に生まれた世代にも、訴えかけるものがあるはずだ。昭和の歌が見直されている現在、なにより、「アイドル歌手」松田聖子がこんなにすごい歌を歌っていたんだということを、もっと世の中は知るべきだ。

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hirohirorinpa25

記事読ませていただきました。
「振り向けば…聖子」や聖子ちゃんについて知らないことが書いてあり興味深かったです。

遂に9月23日に「振り向けば…聖子」が歌謡ポップスチャンネルで再放送されることが決定しましたね!!
私もDVD化、いやBlu-Ray化を望んでいる者の1人ですので、この知らせを知ったときは望みが少し叶った気がして最高に嬉しかったです。
残念ながら肝心のカバー曲は放送されませんが放送が待ち遠しいですね。
by hirohirorinpa25 (2018-08-11 15:10) 

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