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ハイビジョン試験放送時代にハイビジョン撮影されていたフジテレビの「北の国から95」 [その他]

 昨年の2017年2月19日、テレビのチャンネルをザッピングしていたら、「北の国からスペシャル95」をやっていた。内容自体は、何度か見ているし、わかっているから、「ああ、またやっているんだ」と、最初は思った。しかし、次の瞬間、「あっ」と言って思わず身を乗り出した。
 「これ、ハイビジョン撮影じゃないか…」
 あわてて途中からハードディスクレコーダーに録画し始めた。ハイビジョンに間違いない。ネットで調べてみると、フジテレビのHPにわずかに1行だけ、「95スペシャルからハイビジョンで撮影された」とあった。
 
 正直、すごく驚いた。1995年放送と言えば、撮影は1993年か1994年あたりからということになる。この当時、NHKですらハイビジョンは試験放送だった。1991年に始まった試験放送は、1994年11月25日から「ハイビジョン実用化試験放送」としてNHKと在京民放5局+WOWOW+朝日放送の共同チャンネルとなっている。まだそんな時代のことである。
 
 このとき、各民放が所有していたハイビジョンカメラは、テレビ朝日とフジテレビが7台、TBSテレビが3台、日本テレビが2台、WOWOWと朝日放送が1台、テレビ東京は0台だった。人気局だったフジテレビが7台を所有していたのは、その勢いから理解できるが、それでもわずかに7台。このうちの4~5台を、「北の国から」の野外ロケとしてEFP(エレクトロニック・フィールド・プロダクツ)カメラに用いていたのだ。
 EFPだけではない。3時間以上のこのドラマの編集は、すべてハイビジョンで行われていた。当時はまだ編集装置が潤沢にある時代ではない。この編集には、膨大な時間と費用が使われたと思われる。もしかすると、NHKのスタジオを借りていたとも考えられる。
 「北の国から95」の制作当時、この番組がハイビジョンで放送される可能性は全くといっていいほどなかった。それでも、この後のコンテンツ市場を見据えて、あえてハイビジョンで制作されていたのだ。
 
 これを通常の4:3地上波で放送するのにも、多くの苦労があったと思われる。もちろんハイビジョンそのままで放送はできない。16:9からダウンコンバートは必須となる。だが、ただ4:3にすればよいというわけではない。16:9の画角と、4:3の画角では、そもそもの映像制作基準が異なる。ハイビジョン画像を確認しながら、トリミングを繰り返し、時には画像の拡大などをしながら、4:3画像にダウンコンバートしたものと思われた。このダウンコンバートにも、多くの時間が必要だったろう。
 この「北の国から」の再放送でいつから「95」がハイビジョン放送されていたのか、私は全く知らない。しかし、23年たった今でも、この「北の国から95ハイビジョン」は、現在のBS放送と全く遜色のない高画質で放送されていた。細部の美しさ、奥行き感、ノイズのなさ。驚くほど美しい。
 横山めぐみ、大竹しのぶ、宮沢りえの女優陣が、素晴らしくきれいで美しかった。とくに宮沢りえの可憐さ、美しさ、かわいさは群を抜いていた。呆然と見つめてしまうほどだった。
 また、大竹しのぶは出演場面わずか11分間。4:3時代でも光っていたが、ハイビジョンとなってその存在感は圧倒的となった。高画質化が俳優の演技を深めるという好例だろう。例えば、田中邦衛と大雪が降る中、バスを待つシーンがある。ここで田中邦衛が振り返ると、大竹しのぶは両目から1粒だけ、涙を流しているのだ。
 明石家さんまが言っていた。「あるシーンで振り返ると、大竹しのぶがどーっと涙を流していてすごくびっくりした」 憑依型女優の面目躍如といえよう。だが、このわずかな涙は、4:3画面でははっきりと見ることができない。
 大竹しのぶが出るシーンは、たまたま大雪が降っていて、大粒の雪が田中邦衛と大竹しのぶの衣装に降りかかる。それが着いて、溶けていく様までがわかる。シーン切り替えでその雪が溶ける様が連続しているので、ワンカットで撮影されたことまで雪の様子でわかってしまう。もちろん、降りしきる雪の一粒一粒の結晶が、見えるのだ。
 「北の国から」はその後98年と2002年に制作され、いずれもハイビジョンで撮影されていた。2000年代初めには、まだ4:3画像のドラマが多く制作されていたことを考えれば、16:9でしかもハイビジョンで撮影されていたことは、今でも賞賛すべき事実だろう。

 フジテレビの全盛時代、しかも看板番組だからハイビジョン撮影は可能だったと言えようが、とくに94年に、果敢にハイビジョン撮影に挑戦した制作陣には、敬意を表したい。なぜって、それが23年たった今、「今時の当たり前の画質」として見られてしまうんだから。これは「先見の明」という言葉だけで表現するにはあまりに不十分な客観的事実なのではないかと思う。
 
 ネットで調べてみてわかったことだが、95年の「北の国から」がハイビジョンで撮影されていたことは、ほとんど何も書かれていない。もっと強調してもよいのにとすら感じてしまう。だが、その時代背景から考えると、あの時代にハイビジョンで長時間ドラマが撮影されていたことは、かなり驚くべきことがらなのではないかと思う。

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